
成年後見人が不動産売買に増える理由は?制度利用の推移と関係も紹介
近年、高齢化社会の進行に伴い、「成年後見人制度」の利用者数や申立件数が増加しています。しかし、その一方で「なぜ今、成年後見人による不動産売買が増えているのか?」と疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。本記事では、制度利用者数の最新動向と増加背景、不動産売買との関係をわかりやすく解説します。成年後見人制度が不動産取引にもたらす影響や今後の展望について、具体例を交えてご紹介します。

成年後見制度利用者数の推移と現状
日本における成年後見制度(法定・任意後見を含む)の利用者数は増加傾向にあります。2024年12月時点では、制度の利用者総数は約249,484人に達し、2019年(224,442人)からこの5年間で約11.2%増加しています。特に「後見(判断能力が著しく低下した場合)」が約70.6%を占めるなど、重度の判断能力低下者への支援が中心となっていますです。
| 項目 | 数値・割合 | 内容 |
|---|---|---|
| 利用者総数(2024年末) | 約249,484人 | 法定・任意後見含む累計 |
| 5年間増加率 | 約11.2% | 2019–2024年にかけての増加 |
| 「後見」による利用割合 | 約70.6% | 最も重い支援タイプ |
申立件数も増えており、2024年には41,856件に達し、前年の40,665件から約1,191件の増加となっていますです。また、申立人の23.9%が市区町村長によるもので、親族は18.1%にとどまっており、専門職や公的機関の関わりが増えている傾向が見られますです。
認知症の増加もしっかりと制度利用の増加に影響しており、制度利用の開始原因として認知症が全体の約61.9%を占めていますです。一方で、80歳以上の利用者が約51.3%を占め、特に女性の割合(約56.3%)が高く、超高齢社会における実態が反映されていますです。
このように、成年後見制度の利用は着実に増加しているものの、依然として利用率には改善の余地があります。認知症の高齢者の増加に対応するには、さらなる制度の周知と利用促進が求められる現状となっていますです。

不動産売買における成年後見人の関わりの実態
成年後見人は、判断能力が十分でない方(成年被後見人)に代わり、財産管理・法律行為や不動産売買を行える法定代理人です。特に不動産売買においては、法定後見において成年後見人が重要な役割を担います。法定後見制度では、成年後見人は代理権や取消権を持ち、不動産取引を本人の利益に沿って進めることが求められます。これは、本人が不利益な契約を結ばないよう保護するための制度的仕組みといえます 。
成年後見人が不動産売買を行う際には、不動産の種類によって手続きに違いがあります。居住用不動産(自宅など)の場合、売買には「家庭裁判所の許可」が必要です。一方で、非居住用不動産(賃貸用・投資用など)の場合は、通常の売買と同様に進められ、原則として裁判所の許可は不要です 。
次に、居住用不動産を売却する際の手続きの流れを表形式で整理します。以下は典型的な流れの概要です。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 申立て・審判 | 家庭裁判所へ後見人選任と居住用不動産処分の許可を申請 | 医師の診断書や財産目録、売却理由などが必要です |
| 媒介契約 | 不動産会社と媒介契約を結び、売却活動を開始 | 売却価格の目安や条件を共有して進めます |
| 停止条件付き契約 | 売買契約に「裁判所許可が得られた場合に効力発生」などの条件を付加 | 裁判所の許可が得られなかった場合、契約が無効となる措置です |
| 裁判所の許可取得 | 家庭裁判所より正式に居住用不動産売却の許可を得る | 許可後に売却手続きを安全に進められます |
このように、成年後見人による居住用不動産売買には、家庭裁判所の許可取得を前提に、独自の契約形式や手続きの順序が必要となり、通常の売買と比較して法的保護の観点から慎重な対応が求められます。

制度利用増加が不動産売買にもたらす影響
高齢化や認知症の増加に伴い、成年後見制度の利用が増加すると、不動産売買への影響も顕著になります。以下にその主な要因を整理します。
| 影響内容 | 具体的内容 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 不動産売却機会の拡大 | 認知症等で判断能力が低下した人でも、成年後見人による代理で売却可能 | 資産凍結を回避し、売却して介護費用等に活用できる |
| 売却手続きの法的安心感 | 家庭裁判所の監督や許可により、売買契約の有効性と安全性が確保 | トラブルリスクが低減され、売却時の信用性が向上 |
| 不動産流動化の促進 | 制度普及により、不動産が市場へ出やすくなる | 流動性が高まり、不動産市場の活性化につながる |
まず、成年後見制度を利用すれば、認知症などで意思能力が不十分となった方が所有する不動産でも、成年後見人が法的な代理として売却を行うことができます。このため、本来自身では売却できない状況でも、資金調達の手段として不動産売却を実現できる場合があります 。
次に、居住用不動産の売却にあたっては、家庭裁判所の許可が必要です。これにより、売買契約が法的に有効かつ適切な手続きで行われることが担保されます。家庭裁判所の関与は契約の透明性を高め、後のトラブル防止につながります 。
さらに、成年後見制度の利用が進むことで、認知症などによって不動産が市場に出にくくなる「資産凍結」の状態を解消し、結果として不動産流動化が促進される可能性があります。不動産市場における資産の移動が活発になることで、全体的な流動性向上にもつながる見込みです。また、家族信託の利用増加が同時に進んでいる点も、流動化の一因として指摘されています 。
総じて、成年後見制度の利用増加は、不動産売買において必要な法的裏づけを提供し、資産運用や介護費用の確保など、実生活への影響を考慮した売却機会の拡大につながります。制度利用のメリットを正しく理解し、適切な支援を得ることが大切です。

今後の展望と制度改善の方向性
成年後見制度に関しては、利用者のニーズに応じてより柔軟に活用できるよう、法制度の見直しが進められています。特に「スポット後見」と呼ばれる特定目的型の後見制度導入に向けた議論や、終了条件付きの仕組みの検討が加速しています。例えば、不動産売却のような明確な目的が達成された時点で後見を終了できる仕組みが検討されており、利用者の負担や長期的な制度運用の課題への対応が進められています。これは制度の利便性向上につながる重要な方向性です。
また、制度利用者の安心を支えるために、家庭裁判所の運営体制の強化や市区町村など自治体による支援窓口の整備も進められています。地域包括支援センターや権利擁護センターといった機関が相談支援や申立て支援を担い、家庭裁判所と連携することで、申立てから許可取得までの手続きが円滑に進むようになってきています。
さらに、後見人の選任状況にも変化が見られます。以前は親族が大半でしたが、近年は専門職(弁護士・司法書士・社会福祉士など)の選任が増加傾向にあります。制度の専門性確保や透明性向上が期待される反面、専門職後見人だけでは需要を賄いきれない課題もあります。そのため、市民後見人の活用促進や補助・任意後見制度利用の推進など、多様な担い手の整備が課題として挙げられています。

以下の表は、今後求められる制度改善の方向性を整理したものです。
| 改善項目 | 現状の課題 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| スポット後見の導入 | 終了できない終身制度 | 目的達成後に終了しやすくなる柔軟性 |
| 家庭裁判所・自治体支援体制 | 制度申請の複雑さ | 申立ての支援を通じた手続き円滑化 |
| 後見人の担い手多様化 | 親族後見の減少・専門職への偏重 | 市民後見人や補助制度の活用促進 |
今後の法改正や制度改善により、成年後見制度はより利用しやすく、目的に応じた柔軟な活用が可能となる見通しです。これにより、必要な支援を受けながら不動産売却などを適切に進める環境が整いつつあります。

まとめ
成年後見制度の利用者が増加し、なかでも認知症の方の増加がこの傾向を支えています。それにより不動産売買を成年後見人が担う場面も増え、家庭裁判所の許可手続きなど専門的な対応が求められるようになりました。今後も制度の周知や手続きの円滑化が進むことで、不動産の売却や流動化がさらに活発になることが予想されます。社会の変化を踏まえ、より利用しやすい制度への改善が期待されます。

