
外国人による住宅取得にどんな変化があった?過去と現在を比較して市場の特徴を紹介
日本の住宅市場では、外国人による住宅取得が近年注目を集めています。過去と比べてどのような変化が起きているのでしょうか。外国人の住宅取得をめぐり、規制の有無や需要の推移、市場への影響など、さまざまな観点から徹底解説します。なぜ日本が外国人に選ばれるのか、その理由や住宅市場の今後の動向まで、分かりやすくご紹介します。これから住宅購入を検討されている方も、ぜひご一読ください。

外国人による日本での住宅取得の状況とは(過去と現在での変化点)
かつて、日本では外国人による住宅取得に関して、住民である必要すらなく、日本人と同じ手続きで購入が可能でした。特別な制限や追加税もなく、別荘やセカンドハウスとしての取得にも規制はほとんどありませんでした。このような状況は、アジア太平洋地域において極めて異例なほどの開放性と言えます。
しかし、近年では政府が実態把握に動き始めています。三菱UFJ信託銀行の調査では、東京都心部で販売された新築マンションの2割から4割程度が外国人による購入と示唆されており、その一方で、国土交通省などは、外国人投資の影響を把握するため、登記情報を用いた初の調査に着手しています。
| 項目 | 過去 | 現在 |
|---|---|---|
| 法的規制 | ほとんどなし | 重要土地取引で国籍届出義務(2025年7月改正) |
| 実態把握 | データほぼなし | 信託調査・登記情報調査が開始 |
| 取得動向 | 把握困難 | 新築マンション2〜4割が外国人購入の推計 |
また、在留外国人数は近年急増しており、2023年末時点で341万人を超え、前年比で約10%増加しました。特に東京都などの都市部に集中し、不動産市場における需要押し上げの要因となっています。

外国人の住宅取得がもたらす市場への影響(比較)
まず、外国人投資家によるマンションや空き家取得の傾向として、地方では安価な空き家への関心が高まっており、文化的魅力や将来的価値創造を見込んで購入・改修される例が増えています。日本の空き家数は2023年時点で約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を記録しており、地方を中心に安価な物件への注目が集まっています。
次に、地方と都市部での傾向の違いですが、地方では古民家や空き家を宿泊施設やワーケーション施設としてリノベーションする外国人オーナーの事例が見られます。例えば、新潟や長野では欧米出身の方が地元の空き古民家を宿泊施設や文化体験施設として再生する動きが進んでいます。

一方、都市部では東京都心の高級マンションなどへの投資が顕著で、地価や住宅価格の上昇圧力を強めています。観光需要との関連で「スーパースター都市」では地価上昇の傾向が強く、特に外国人投資や観光の流入が活発な都市で顕著とされます。
こうした傾向が住宅価格や地価に与える影響について、下表にまとめます。
| 地域 | 傾向 | 影響 |
|---|---|---|
| 地方(過疎地・観光地) | 空き家・古民家の購入・リノベーション | 地域活性化や文化体験施設の創出、観光需要の刺激 |
| 地方(住宅安価地) | 安価な住宅取得によるセカンドハウス・宿利用 | 投資多様化、人口定着の可能性向上 |
| 都市部(大都市中心部) | 高級マンションなどへの投資 | 地価・住宅価格上昇、価格格差の拡大 |
このように、外国人の住宅取得は、地方の空き家再生を通じた暮らし・ビジネスの多様化と、都市部における価格上昇圧力という、二つの対照的な市場影響を生み出しています。

なぜ外国人は日本の住宅を選ぶのか(動機の比較)
外国人が日本の住宅、特に空き家や古民家を選ぶ理由は、次のように大きく三つの目的に分類できます。
| 動機の種類 | 特徴・背景 | 具体的な利点 |
|---|---|---|
| 投資・資産保全 | 政治的・社会的に安定している日本の不動産市場は、資産保全に適しています。 | 円安や利回りの高い地方物件を活用した資産形成が見込まれます。 |
| 移住・セカンドハウスとしての利用 | リモートワークの普及により、日本での居住や滞在型生活を選ぶ外国人が増えています。 | 和風の庭や伝統的な建築を楽しむセカンドハウスとしての利用が可能です。 |
| 空き家のリノベーション | 日本には空き家が多数存在し、手頃な価格で改修して自分好みの住まいにする動きがあります。 | 資産価値向上や宿泊施設・ワーケーション施設への転用といった新しい用途が生まれています。 |
まず「投資・資産保全」としては、日本の少子高齢化や空き家の増加を背景に、地方の空き家が手頃な価格で売買される機会が増えています。政治的に安定した環境に加えて、円安による割安感もあり、外国人にとって投資対象として魅力が高い点が見られます。また、表面利回りの高さや資産の多様化にもつながります(Re'bertas株式会社)。

次に、「移住やセカンドハウスとしてのニーズ」の顕在化です。リモートワークの広がりにより、日本への長期滞在や移住を視野に入れる外国人が増加しています。和風庭園や伝統構法の住宅は、異国情緒や癒やしを求めるニーズにも合致しています。在留外国人数も増えており、2024年6月時点で約358万人と過去最高を更新しています(Re'bertas株式会社)。
最後に、「空き家を利用したリノベーション需要の高まり」です。日本には2023年時点で約900万戸の空き家が存在し、この社会的課題をリノベーションによって解決しつつ、新たな価値を生み出す動きが活発化しています(Re'bertas株式会社、全日本不動産協会)。とくに外国人は、安価な物件を購入し、自分の好みに合わせて改修することで、宿泊施設や文化体験の場として活用する事例が増えています(Pointblank Promotions Ltd、Business Insider Japan)。
このように、外国人が日本の住宅を選ぶ動機には、「資産保全・投資」「生活スタイルの多様化」「社会課題を活用した創造性」が複合的に存在し、それぞれの目的に応じた選択肢が広がっていることが理解できます。

今後の動向と政策対応(過去との比較を踏まえて)
近年、日本政府は外国人による住宅取得の実態をつかむために、登記情報の活用を開始しています。国土交通省は、登記情報をもとに東京都心部のマンション購入者の実態把握に着手し、2025年度下半期には報告書の公表を予定しています。これにより政策基盤が整備され、今後の住宅政策や市場調整が進む見通しです。
| 項目 | 過去 | 現在・今後の見通し |
|---|---|---|
| 登記情報の活用 | ほとんど活用されていなかった | 東京都のマンション登記情報を活用し調査開始(2025年度下半期報告予定) |
| 政策対応 | 規制は特定区域のみ(基地や発電所周辺など) | 重要区域での利用目的届出義務・罰則強化の検討 |
| 外国人住民の増加 | 在留外国人数は200万人台 | 377万人に増加、賃貸住宅や所有への需要増加が見込まれる |
政府は、基地や原子力発電所など安全保障上重要な施設周辺を対象に、外国人による土地取得に利用目的の事前届出を義務づけ、違反には罰則を課す「重要土地等調査法」に基づく制度を強化しようとしています。2024年12月時点でこうした区域での取得件数は371件確認されています。

また、WTOの内国民待遇原則や日本国憲法第29条により、日本では外国人に対しても財産権が保障され、土地取得を全面的に制限するのは困難とされています。そのため、現実的には規制よりも「実質的に制限する」仕組みづくりが模索されています。
さらに、在留外国人は2024年末時点で約377万人と過去最多を記録しており、今後も技能実習生や特定技能保持者の増加が見込まれています。この背景には、住宅ローン減税など外国人にも平等な支援制度が提供されてきたことがあり、長期居住外国人の持ち家率が日本人より高いケースも確認されています。
こうした動きを踏まえると、今後は登記制度の整備を起点とした実態把握の強化、安全保障上の区域に限定した政策的監視、そして増加する外国人に対応した住宅供給の拡充が、不動産市場の需給バランスや社会的安定に向けた重要な柱になると予想されます。

まとめ
外国人による日本での住宅取得を巡る状況は、過去から現在にかけて大きく変化しています。従来は法的な規制がほとんどありませんでしたが、近年では政府による実態調査や市場動向の分析が進められています。また、在留外国人の増加や多様なニーズの高まりにより、都市部から地方まで様々な形で住宅市場へ影響を及ぼしています。今後もこの流れは続くと考えられ、政策対応や市場の動きを注視しながら、状況にあわせて柔軟に判断することが重要です。

